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陰謀は構造である

.28 2019 断章 comment(0) trackback(0)


陰謀は構造である。さらに言えば、それは見えない構造物に光が当たった瞬間に、地平に長く伸びる影のようなものである。つまり、世界に陰謀を見いだす者は、見えない構造物に光を当ててしまい、影を見てしまった人間なのである。

そして、陰謀が見えない構造であるということは、陰謀とは<暗号で書かれた他者の欲望>であるということだ。かくして陰謀は読み解かれた瞬間から、陰謀の首謀者が不在のままに、ひそかに、現実のものとして、着実に進行してゆく。

ポーとワイルドのあいだ。

.27 2019 日記 comment(0) trackback(0)


オスカー・ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」を読んだ。ドッペルゲンガーや、内在する善と悪の葛藤等、エドガー・アラン・ポーの「ウィリアム・ウィルスン」と同じテーマの作品だと言えるだろうが、オスカー・ワイルドの方が面白く、かつ、圧倒的にエレガントだが、しかし、作者が余りにすべてを説明しているためにポエジーが存在しない。つまり、読後に何かを語りたいという欲求には駆られないのだが




それに比して、ハードボイルド小説の創始者としての栄誉も得られそうなほどに、クールで即物的な一人称で語られるポウの「ウィリアム・ウィルスン」だが、極度に装飾を排したこの文体こそ、ウィリアム・ウィルスンと名乗る男が語る信じがたい物語を読者に納得させるためにポウが創造したものである。しかし




重要なのはここからだ。この信じがたい話を語る<話者の存在>を読者が納得しかけたその時、最後の最後にポウがいきなり仕掛けた罠、つまり、圧倒的なアクチュアリティを持って存在していた話者が突然<信頼のおけない話者>へと変貌するというレトリックの罠




この仕掛けによって読者は一瞬にして宙ぶらりになり、物語の場からあっという間に置き去りにされてしまうわけだが、あの戸惑い、あの戦慄、あの一瞬ゆえに、「ウィリアム・ウィルスン」という短編は奇妙な傑作となり、読後の印象は一生忘れ得ぬものとなって読者の脳髄の底で輝きつづけるのである。


口に含んだ物を飲み干しながら

.27 2018 詩篇 comment(0) trackback(0)


口に含んだ物を飲み干しながら窓辺のカウチに倒れこみ

眼を固く閉じているのになぜか視界に広がる眩しい光に

いい知れぬ戸惑いと恐怖を覚えて寝がえりを打った瞬間

ぼくはユーフラテス河の川辺にひとりで横たわっていて

処女の太腿のような葦の群生に埋もれながら眠りにつく 




朝の光芒を裂くように褐色の少女の腕が差し伸べられて

その幼げな指を一本だけ歯と舌で愛でながら眼をひらく

するとぼくは砂漠に湧く泉の陰に仕立てられた天蓋の下

ふと耳元で大鴉が囁く気配がしたのは名付け得ぬ何かを

だれかが不用意に裸形の言葉で口にしたからに違いない




それからぼくの記憶にあるのはペテルブルクで酔い潰れ

泥酔の果てに排水溝に落ち凍死体で発見される屍体だが

解剖すると胃の中にカスピ海の海水が発見されたことで

明らかに殺人の疑いが強まり慌てまくる関係者を横目に

黒猫が屍体の傍らで微笑みながら大きな伸びをする姿と




珊瑚礁の明るい水底に根をおろして貴種流離の夢みつつ

怠惰に暮らす海藻のお嬢様方が七つの海をさすらうのに

疲れて世界滅亡の呪文を漏らすやくざな浪どもの懇願に

応えて心やすくその身を委ねるような午後のまどろみに

目眩だけを覚えながら無為の流転を回想するだけの人生




それは滅びの笛のような吐息を漏らすだけの日々だから

歯で噛切った爪で手首の裏を掻きむしるのが習慣になり

ぱっくりと開かれたままの傷口とその傷口のかさぶたを

爪で剥がす行為との間で壊死しかけている皮膚から浸む

悪い血がまたぞろ膿胞を孕ませてぼくを苦しめるのだが



光を掴めという渇望とその裏に粘りつく諦念に導かれて

チュニスの亜麻色の街角で悪魔と密約を交わした午後に

ぼくは都市と悪魔はよく似ている事に気がついてしまう

どちらも欲望と恐怖の二つの目しかない骰子を転がして

為す術もなく破滅だけが待ち受けるゲームを強いるのだ




表参道の遊歩道では堕天使たちが非の喇叭を吹きながら

地下からぞくぞくと群れをなして沸いてくるのが見える

その堕天使たちは顔の左反面が醜く焼きただれているが

ぼくは溶け損なった砂糖が喉にこびりついて声を失って

陽だまりに脚が嵌ったまま身動きが取れないままなのだ




それからぼくは発情期の白いコヨーテになりコロラドの

ハイウェイでヒッチハイカーをピックアップするだろう

そのビッチをダイナーの駐車場でたっぷりと嗜んだあと

砂糖菓子のようにざらついた少女の肌を見に纏いながら

太陽と鉄と月とコンクリートの懐かしい場所で夢を食む




どんな約束も奴隷への道だからしてはいけないはずだし

こうなればもはやニューオリンズの沼地に小屋を建てて

権力への欲望で生くるしく乾いた蛇の舌を切断してから

死者の言葉を口にする忌わしい赤ん坊の頸を締め殺して

所有権を主張する母親と共に沼底に沈めるしか道はない




それからぼくは遅延された死の余韻に舌鼓をうちながら

約束は奴隷への道だからしてはならぬという天啓に抗い

なにひとつ楽しみなどないことが最高の贅沢とつぶやき

明日の訪れを待つこともなく忘却という毒を呷りながら

今日という日を街角で待ちぶせてゆっくりと殺すだろう 

Moonshine

.06 2017 詩篇 comment(0) trackback(0)


太陽と鉄。月とコンクリート。懐かしい場所で夢を食むだけ。




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註釈:瓜南直子画伯からお褒めの言葉をいただいたので、このツイートを詩としてアップすることにいたしました。思えば十数年も前の話。猛暑の夏の東京を、夜となく昼となく、何の希望も無くうろついていた頃にふと浮かんだ呟きではありました。今とて、米粒ほどの希望が生まれたという訳でもないのですが。





氏のブログはこちらです→<瓜南直子のブログ>http://kanannaoko.seesaa.net/

Tokyo Moonshiner

.24 2011 詩篇 comment(4) trackback(0)

こうしてトーキョーは再びブレードランナーの舞台となった。我々はもうひとりのデッカードとなり、それぞれのレイチェルと共にエレベーターに向かい、ゆっくりとその扉を閉めるのだ。



2.jpg



註釈:今の東京に棲むということは最高にパンクだ。しかし、別にクールというわけではないと思うね。じゃ、そういうことで。


鬼火

.26 2010 詩篇 comment(1) trackback(0)


救済も、希望も


燃えないゴミの日に
捨ててしまいましたから


逃げようとしても
行くあてがありません


食料もありません


旅費もありません


ここで立ち腐れするのを、待つだけです


しかし、いずれは腐る体だというのに


どうしてこんなに憂鬱なのでしょうか
どうしてこんなに悲しいのでしょうか


成就の遅延だけが
わずかな生きる糧だとしても


己への異義申し立てだけが
ひそかな情熱の証だとしても


このままでは終わり無きものへの
おろかしい敗北だけが


眼の前に横たわっているだけです


友よ。証拠の不在を
たったひとつの贖罪にして


辿り着けない結論を目指して
共に肩を並べて


ふたりだけの旅をするはずでしたが


孤独の報酬に眼がくらんだ私は
一瞬先の異臭に気づくのが遅れたために


腐敗する時間の罠に
はまってしまったのです


いまはただ、いつものように


午前11時半の陶酔を待ちながら


ここで生き腐れするのを、待つだけなのです




IMG_cat2987.jpg




註釈:取り消された夏と失われた永遠のあいだで、うらぎりものの賢人が、おしゃべりな淫乱女を追いはらい、忠義なおろかものたちの純潔と禁欲を称賛したものだから、世間はいまや腐臭をはなつ憎悪に満たされつつあるのですが、そこへ、ずるがしこいぼくたちの救世主がやってきて、「どこかになにかがあるのかもしれないけど、どうせそれはぼくたちのものじゃないんだ!」などと言い放ち、突然ご登場あそばした<泣き男>たちを従えて、歌舞音曲による見事な愁嘆場をご披露してくださったという次第。もはや全ての行為は、すでに舞台の外で演じ切られてしまったようですね。さて、かくなるうえは、ぼくも<泣き男>の仮面を被って、拙い踊りのひとつでも披露することにいたしましょう。


From here to enptiness

.26 2010 詩篇 comment(0) trackback(0)


どこまでもつづく蒼い空は、あれは永遠なんてどこにも無いのよと教えてくれていたのですね。海と太陽が交合する夕方の光景は、あれは永遠などではなくてただのありふれた過去の再演だったのですね。なんてことでしょう。




IMG_AO1050.jpg




註釈:洪水のはじまる時に向けて箱船を造ろうとしたのですが、ぼくの船は簿記のひとつもできぬ空気頭のおかげで破綻してしまい、一度も浮かぶことなく無惨に崩落したのでした。いずれにせよ、つぎはぎだらけの箱船に乗りこんだとしても行く末は知れたものだったのかもしれません。そして洪水のあとには、無慈悲な露をしたたらせながら、能天気な花が群れをなして咲き誇るのでしょうか。


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プロフィール

ashzashwash

Author:ashzashwash
桑原義江。男性。Ash。あるいはy<kと名乗った事もある。あるジャズ・レーベルのマネジメント・オフィスに勤務。その傍ら知人の紹介で、ファッションビルの広告媒体や某音楽系出版社の女性雑誌にアート関係の記事を書かせて頂き、その稿料で貧困生活を糊塗する日々が続く。或る日の朝、出勤のため恵比寿の坂道を下っている時に何もかもが嫌になり、地下鉄丸の内線日比谷駅のホームのベンチに蒼白な顔色で座っている姿を学生時代からの友人が見かけたのを最後に、東京23区内から失踪。赤坂のオフィスのデスクの上に残された遺留品は、デルヴォーの画集、カランダッシュの青いボールペン、それからビル・ラズウェルのライブのデモテープ、以上の三点であった。その後、アムステルダムの娼婦街でよく似た横顔の女衒を見かけたという報道もあったが、本人が非公式に否定。現在に至る。

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