スポンサーサイト

.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Old Fashioned Love Songs

.11 2010 回想 comment(8) trackback(0)

都会の夜のためにジャズは生まれた。『華麗なるギャツビー』で知られるジャズエイジの桂冠詩人、スコット・フィッツジェラルドがこんなことを書いている。

「1920年代のアメリカは史上最大の馬鹿騒ぎを演じていた。ジャズエイジは金のいっぱい入ったガソリンスタンドを持っていて、自分たちだけの力で走った。金がなくなっても心配はいらなかった。まわりが豊かだったからだ」

その象徴がスコットの愛妻、ゼルダ。ショートヘアでスポーツカーを乗りまわし、やつぎばやに煙草をふかし、夜毎パーティーに明けくれるフラッパー。ゼルダが云うように、あの頃はいつもティータイムは真夜中だった。禁酒法をくぐりぬけたナイトクラブの喧噪。符牒を告げてようやく扉が開かれるスピーク・イージー。クルスタルの鉢に盛られた早摘みの苺。バターの池に浮かんだフォアグラ。シャンパングラスの中の泡。そして、ホテルからホテルへの移動祝祭日。
こうして二人は、ジャズの旋律がこぼれ落ちるニューヨークの舗道の上を、いつまでも無軌道に遊びつづけた。ジャズエイジという、若さと美しさ、優雅なお遊び、機知に飛んだ悪ふざけ、そんな放蕩だけが意味をもつという幸福な時代が、恐慌とともに、ふいに終りを告げるまで。

いや。そうではない。ほんとうは、この二人には終演のベルが聞こえなかったのだ。そして、痛ましい悲劇が起きることになるのだが、それはまた別の話だ。

いずれにしてもジャズには、破滅へといたる甘い予感、倦怠にみちた蕩尽という、危険なイメージがつきまとう。そしてジャズの音色は、街角の舗道や、路地の暗闇、紫煙がたちこめる秘密めいたクラブこそが似つかわしい。

ヴィクター・ラズロという女性シンガーがいる。ハスキーなアルト・ヴォイスで、メランコリックで無国籍な唄を聞かせる歌手だ。ところで、『カサブランカ』というアメリカ映画の中で、ハンフリー・ボガードが愛したイングリット・バーグマンの夫という人物が登場するのだが、その男の名がヴィクター・ラズロ。彼はレジスタンスの英雄。男が惚れるボギーが認めたほどの男、それがヴィクター・ラズロだ。その男の名を芸名に選んだというこの女性歌手には、不吉でいかがわしいファムファタールの雰囲気が漂っている。この雰囲気こそが、ジャズなのだ。

映画を思い出そう。カサブランカで傷心の日々をやり過ごすボギー。そんな彼のサンクチュアリであるナイトクラブ<リックス・カフェ>。その中で、禁じられたはずの曲 "As Ttimes Goes By" が唄われた瞬間、甘美な禁断の恋人が、ふたたび彼のまえに現れる。まるで夢のようだ。ひたすら彼が待ち続けたはずの、破滅へといたる人生の素晴らしい最終章が、ようやく今、始まりを告げたのだ。





02-02.jpg





註釈:ゼルダ・フィッツジェラルド以外にぼくが気にしていることといえば、グレゴール・ザムザがあの出来事が起きるまえの深夜に見たはずの気がかりな夢。ディズニー世界におけるグーフィーとプルートゥの関係。同じ犬なのに、かたやミッキー・マウスと同格の市民、かたやミッキー・マウスのペット、この両者が遭遇した時の顔を見てみたい。あと、サンダーバード5号にひとりでずっと乗っている青年の青春。それからE.T.が去ったあとのエリオット少年の空疎な生活。

comment

ashzashwash
参考資料:
http://www.youtube.com/watch?v=Jo2l8LDV9zc&feature=youtube_gdata
2010.04.11 16:11
若様
猫がかわいい☆
2010.04.11 16:12
ashzashwash
へへへ(照れてる)。
2010.04.11 16:15
451f
私もこういう日記を書いてみたいです。
映画のスウィングガールズで知った程度の知識しかないもので。
大人のかっこいいブログの匂いがします。
2010.04.11 19:30
ashzashwash
ますます照れることを書かれてしまいました。451fさん、いつもありがとうございます。

そういえば某所で<スピーク・イージー>について質問されたので、ここで補足しておきます。

これは禁酒法時代に密造酒を飲ませるクラブのことです。入店する際に合い言葉を言って入るので、この通称がついたようです。まあ、ディスコティックやクラブのドレスコード(服装チェック)と同じく、気分を盛り上げるための仕掛けだったと思いますが。
2010.04.11 22:06
forgetful_cat
中学生の頃、私は大人の中に居た。
習っていたピアノの教師が自分達の仲間に
当たり前の様に私を参加させていた。
彼らの溜まり場だったjazz barのカウンターの片隅で
私も当たり前の様にマリアージュ・フレールの
マルコ・ポーロを飲みながら、音楽談義に耳を傾けていた。
学校の音楽教師も私を可愛がってくれて
卒業間近の時に二人で食事に行った。
そして行きつけのjazz clubに私を誘った。
帰りのタクシーで「お仕事帰りですか?遅くまで大変ですね」と
運転手に言われた。
私はそんなに疲れた顔をした十五歳だったのだろうか。
私はそんなに大人だったのだろうか。
確かな事は、私の傍らにいつもjazzが流れていた事だけ。

2010.04.12 00:08
ashzashwash
forgetful_catさんの回想のほうが、ぼくの書いたものより遥かにクールなんで、この続きをどうしても読みたくなりました。流れていた旋律はどんなJazzだったのでしょうか。
2010.04.12 16:58
ashzashwash
で、「若様」さんって、誰?
2010.04.12 16:59

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://ashzashwash.blog120.fc2.com/tb.php/20-dc92c07f

プロフィール

ashzashwash

Author:ashzashwash
桑原義江。男性。Ash。あるいはy<kと名乗った事もある。あるジャズ・レーベルのマネジメント・オフィスに勤務。その傍ら知人の紹介で、ファッションビルの広告媒体や某音楽系出版社の女性雑誌にアート関係の記事を書かせて頂き、その稿料で貧困生活を糊塗する日々が続く。或る日の朝、出勤のため恵比寿の坂道を下っている時に何もかもが嫌になり、地下鉄丸の内線日比谷駅のホームのベンチに蒼白な顔色で座っている姿を学生時代からの友人が見かけたのを最後に、東京23区内から失踪。赤坂のオフィスのデスクの上に残された遺留品は、デルヴォーの画集、カランダッシュの青いボールペン、それからビル・ラズウェルのライブのデモテープ、以上の三点であった。その後、アムステルダムの娼婦街でよく似た横顔の女衒を見かけたという報道もあったが、本人が非公式に否定。現在に至る。

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。