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ぼくはそんなグランパが大好きさ

.13 2010 詩篇 comment(18) trackback(0)


パパはヒバクシャだったから
医療費がぜんぶタダだったんだぜ
だから3回も手術したんだ
3回めのやつなんて
開けて見てすぐ閉じたから
病院の最短手術時間を更新したんだ
ぼくたちは廊下で待ってた
するとグランパが言ったんだ

さあ、みんなで、ひるめしを食いにいくんだ!

おかげで手術室からパパが出て来たとき
ぼくたち誰もいなかったんだぜ
ぼくはそんなグランパが大好きさ




パパはヒバクシャだったから
医療費がぜんぶタダだったんだぜ
だから山ほど痛み止めのクスリを貰ってさ
いつも昼間っからラリってた
ぼくが学校から帰ると
ぼくの前にすわってさ
おれは死ぬのが怖いがお前はどうだ?
おれは死ぬのが嫌だがお前はどうだ?
おれは死ぬのを憎むがお前はどうだ?
みたいな事をぼくに言うんだぜ
するとグランパが窓から顔をだして言ったんだ

おい、庭でノラ犬が死んでるぞ、腐りかけだぞ、見にこないか?

ぼくは庭に行って死んだノラ犬を見た
棒で突っついたりひっくり返したりした
裏側には蟻がいっぱい群がってた
でもどうしてぼくの家の庭に死んだノラ犬がいたんだろう
あとで知ったんだけど
グランパが酔っぱらって隣の犬を蹴り殺したんだってさ
ノラ犬じゃなかったんだ
ぼくはそんなグランパが大好きさ




パパはヒバクシャだったから
医療費がぜんぶタダだったんだぜ
だからでっかい家を建てることもできたんだ
でもせっかくでっかい家を建てたのに
パパはほとんど家にいなかった
あれからいつも病院にいたのさ
いよいよパパがダメだって病院が言うから
みんなで病院にあつまった
そして最後にパパは
妹の名前を口にしてから動かなくなった
ぼくたちは途方にくれた
これからどうしていいか分らなかった
するとグランパが言ったんだ

さあ、みんなで、家に帰るんだ!

そりゃそうだよね
ほかにどうしろって言うんだ
ぼくはそんなグランパが大好きさ




パパはヒバクシャだったから
医療費がぜんぶタダだったんだぜ
だけど世界を呪うのはやめて
いっしょうけんめい働いたんだ
そのせいかな
パパの葬式にはいっぱい人があつまった
家のまわりに長い行列ができてさ
ぐるぐると何重にも長い行列ができてさ
大蛇がとぐろを巻いているみたいだった
するとグランパが言ったんだ

あいつら屍体に何の用があるんだ?
生き返るとでも思ってるのか?

グランパの言うとおりだった
ほんとにパパは生き返らなかった
みんなで棺桶を担いだら
いやな匂いのする液体が床にこぼれた
おこったことはそれだけさ
ぼくはそんなグランパが大好きさ




グランパは遊び人だったから
生まれてこのかた
金なんて稼いだこともないんだ
だからいつでも素寒貧で
だからどこでも厄介者なのさ
パパが死んでからは叔母さんの家に住んでた
ある日ぼくがグランパに会いにいったら
叔母さんが何だかはしゃいでた
今日からグランパは病院に入るんだってさ
グランパの部屋は叔母さんの家で一番いい部屋だった
日当たりもよくって居心地のいい部屋だった
グランパはそこで汚物にまみれてた
まるで汚物の王様みたいだった
床板は腐ってグズグズだった
そしてグランパはぼくに言ったんだ

おれはここで死ぬんだ。おれをここで死なせてくれよ

そしてグランパは何度もそうつぶやきながら
白い制服の人たちに担架で運ばれていった
ぼくはグランパに何も言えなかったよ
ぼくは叔母さんにも何も言えなかったよ
だけどぼくにもひとつだけ言えることがある
ぼくはそんなグランパが大好きさ




グランパは遊び人だったから
生まれてこのかた
金なんて稼いだこともないんだ
だからいつでも素寒貧で
だからどこでも厄介者なのさ
だからかどうか知らないけど
グランパが入った病院はやたら遠くてさ
家からバスに乗って中央駅に行って
そこから電車で終点まで乗って
そこからバスに乗って2時間かかるんだ
夏休みのあいだだけ
ぼくが毎日通うことにした
そして手術の日がやってきた
ストレッチャーで運ばれて行くとき
グランパはぼくに言ったんだ

おお。まるでカワフネじゃねえか

カワフネというのは精霊流しで
仏様を乗せて川から海に流す舟のことだ
つまり死への片道航路の舟のことだ
そしてホントに帰ってこなかったんだけど
こんな時によくそんなことが言えるよね
ぼくはそんなグランパが大好きさ




グランパは遊び人だったから
生まれてこのかた
金なんて稼いだこともないんだ
だからいつでもろくでもなくて
だからどこでもやりすぎちまうのさ
ぼくが生まれたとき
グランパは大喜びしてさ
まだ赤ん坊のぼくを
ママのおっぱいから奪っては
朝から夜まで背中にしょったままでさ
街から街へと歩きまわるんだぜ
それも毎日なんだぜ

ほらあれが街だ。ほらあれが駅だ。ほらあれが橋だ

なんていいながらね
ぼくは毎日グランパの背中で
おなかがすいてみじめなもんさ
そして親指をしゃぶりながら
風景が過ぎ去るのをみつめていたんだ
そうさ人生ってやつは
ぼくの頭のうえを過ぎ去っていくだけなんだ
ぼくとは何の関係もありゃしない
これってすごく大事なことだし
これってすごく大事なことだろ?
そのことをグランパが教えてくれたんだ
ぼくはそんなグランパが大好きだったのさ





02-07.jpg





註釈:長崎生まれです。それで私小説みたいなものを書いてみたいと思ったのですが、どうも台詞を書くのが退屈というかかったるくてならない。どうやらぼくはそういうものを書くのには向いていないようです。実際まったく書けなくて、じゃあバラードにしてみたらどうだろうと思って書いてみたのが、この詩なのです。

comment

oomoji
このネコちゃん、古いパソ(Me)のデスクトップ画像にお借りしてたときがありました♪ ナツカシ。

”死んだら何処へ行くのかしらん?”
煙になって雨になって地にしみこむだけ。
やっぱアンモナイトのほうがいいや。。。。
2010.04.13 15:23
ashzashwash
やっぱ ash to ash...
2010.04.13 15:58
hemakovich
この詩を読むといつも津川雅彦が浮かぶんです。というか、映像になりやすい文章なのです。それは難しいと思うんですけど。

出来れば「ジョージ」の詩も復活させてください。
確かそういうのがあったと思うんですが。

2010.04.13 19:43
ame*
不朽の名作ですね。
以前、ノベライズをと言いましたが、
今の時代には、やはり、アニメ化でしょうか。
ジブリの方、見てますか?
2010.04.13 20:08
mitz
週末は三谷幸喜の「わが家の歴史」を観てました。
舞台が博多だったってのもありまして。
そのドラマの別バージョンを観ている感じです。
戦後の昭和の歴史・・・。
2010.04.13 20:43
ashzashwash
hemakovichさん、いつもありがとうございます。このところブログの編集に集中していて、出不精になっております。そろそろまたあちらこちらと回遊をはじめますので、その折には、何卒よろしくお願いします。
2010.04.13 23:02
ashzashwash
ame*さん、目標はあくまでも、理不尽なまでに高く、やはりライバルは「蛍の墓」でしょうか。そんなわけありませんが。どうもありがとうございました。
2010.04.13 23:06
ashzashwash
「わが家の歴史」、ぼくも観てました。あれは本来ひとりのキャラクターであるべき人物を、無理矢理、西田敏行と佐藤浩市に分けたような印象を受けました。おかげで西田敏行の芝居が冴えないままに終わってしまったのが残念です。
また、ヒロインを二号さんにしたのは、「戦後の日本なんてアメリカの妾みたいなもんじゃないか」というありふれたジョークを具現化してみたのでしょうか。何となく三谷幸喜氏による軽いジャブのような皮肉を感じたのですが。
2010.04.13 23:12
ashzashwash
ジョージって、ブッシュについて書いたバラードの事でしょうか。もうブッシュのことはみんな忘れているような気もしますが、しかし、その後の続編が書けて、もしそれが面白かったら、何気にアップするかもしれませんw。
2010.04.13 23:15
forgetful_cat
浦上教会のマリアは
煤けた白い肌に瞳を無くした真っ黒な穴二つ
縋る者、祈る者をも寄せ付けず
首だけを残して虚空に漂う


幼い頃、祖父に抱かれて眠っていた。
祖母の入院する病院まで、毎日二人で手を繋ぎ散歩した。
見舞いを終えた帰り道
側溝の穴の傍に座り込んで石を落として遊んだ。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ…
私の気が済むまでそれは続く。
祖父は黙って遊び終わるのを待つ。
私が立ち上がると、そっと手を取った。
いつも帽子を被っている人だった。







2010.04.14 00:24
山猫軒
長い詩が、少しも長く感じない。

短い詩でも最後まで読み通せないのと同じでしょうか。
2010.04.14 11:19
hemakovich
そうそう、ブッシュの詩です。「ジョージ、ジョージ」というリフレインが続いてるから、この詩と同じくらいよく覚えてるんですよ。僕が読んだのはイラク戦争直前の頃でした。
あれを読むと、故ジョー・ストラマーを思い出すんです。Afro Cuban Be-Bopというストラマーがアキ・カウリスマキの映画で歌ってた曲を聴いてて、あの詩を思い出して。
ブッシュのことは忘れても、あれは時々思い出します。
ああいう詩は他の人には書けないですよ。
2010.04.14 13:42
hemakovich
アップする時は「そば処Bush」の看板とか載せられないかなw

2010.04.14 13:45
ashzashwash
forgetful_catさん、優しそうなお爺さまで何よりでした。うちの祖父は歌舞伎役者みたいな顔をした不良だったので、そういう美しい風景は記憶にありません。でも盆栽が得意で、鉢も自分で造って、なにやら賞でも頂いたのか新聞に何度か載ったことがあります。事件を起こしてではなくて。そのあたりが不思議なんですよねえ。
2010.04.14 21:29
ashzashwash
山猫軒さん、恐れ入ります。コメントをありがとうございました。このブログ、コメントのコーナーにウェブのアドレスを置く仕様になっておりません。よく見るとタイトルもない仕様です。そんな訳で、もしよろしければアドレス書いて、置き土産にしていただくと管理人が喜びます。
2010.04.14 21:33
ashzashwash
hemakovichさん、では「そば処 Bush」をフォトジェニックに撮影できるかどうか試してみますw。
2010.04.14 21:36
花森こま
はじめまして。
「なにぬねの?」であなたのコメントその他を拝見してここに辿りつきました。わたしは俳人です。
この詩、ものすごくいいです!
わたしの個人誌で紹介したいと切に思いましたが、貧乏所帯なのでちょっと難しいのが残念です。(スペースが取りにくいのです)
ここに出てくるグランパの存在感は際立っていますね。
死ぬ、ということは、あらたな生を生きるということだと思っているので、このような筋道をたどってあの世の神聖かつ滑稽な領域をつつましく踏み荒らす感じがとても魅力的だと思いました。
もしよろしければ最新号を進呈したく思いますが、ご迷惑でなければ連絡先をお教えください。
 hanamorikoma@hotmail.com
2010.04.16 11:29
ashzashwash
花森こまさん、ありがとうございます。廃屋の片隅でひっそりと生きているぼくではありますが、書いたものを読んでいただくのはとても嬉しいのです。今後ともよろしくお願いします。
2010.04.16 12:45

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Author:ashzashwash
桑原義江。男性。Ash。あるいはy<kと名乗った事もある。あるジャズ・レーベルのマネジメント・オフィスに勤務。その傍ら知人の紹介で、ファッションビルの広告媒体や某音楽系出版社の女性雑誌にアート関係の記事を書かせて頂き、その稿料で貧困生活を糊塗する日々が続く。或る日の朝、出勤のため恵比寿の坂道を下っている時に何もかもが嫌になり、地下鉄丸の内線日比谷駅のホームのベンチに蒼白な顔色で座っている姿を学生時代からの友人が見かけたのを最後に、東京23区内から失踪。赤坂のオフィスのデスクの上に残された遺留品は、デルヴォーの画集、カランダッシュの青いボールペン、それからビル・ラズウェルのライブのデモテープ、以上の三点であった。その後、アムステルダムの娼婦街でよく似た横顔の女衒を見かけたという報道もあったが、本人が非公式に否定。現在に至る。

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