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生き残った者たちの掟

.20 2010 詩篇 comment(4) trackback(0)


異形の怪物の荒ぶる呼吸のように、見知らぬ大陸を駈ける野獣の鼓動のように、鼻孔と心臓の間にある冷たい"しこり"が溶けてはかたまり、しだいにささくれる、すると皮膜のあいだにひそむ無数の虫たちがふつふつと泡立ち、「私は居ない」「此処には居ない」「もう何処にも居ない」とささやく白濁した泡の声色が聞こえてくるのだが。


そんな光景にもすっかり慣れてしまったある穏やかな夕暮れのこと、ありったけの時間という時間のいびつなかたまりが、どうっと、路上に横だおしになり、それから何日も何日も陽に晒されているのを見ているのはつらくて、あまりにもつらくて耐え難いものだから、顔なじみの雨が一心不乱に夜の扉を叩きはじめるのだが。


その音は誰にも聴こえない、あなたに聞えているのは石が割れる音だけだし、無数の雫に刺されて息も絶え絶えの大地が亀裂に耐えかねてうめく声だけだし、だからぼくは、再生されたばかりのぼくは、無明の周縁に佇み、過剰な胎盤に包まれ、見ず知らずの群集の嘲笑を浴びながら、汲めど尽きぬ快楽の源であるあなたの粘膜に覆われたままの姿で、「外食は祝祭でなければならない」などと密かに呟きながら、甘美に窒息し、姦時に失速し、海淵の底に沈んでいくだけだ、海のすべての水を飲み干しながら。




0696.jpg







註釈:心の空白に刺さった何かは、気にするまいと思っても爪と爪の間にねじこまれた針のように痛くて苦しい。部屋中の空気がみし、みし、と音を立てて固くなり、質量を増し、いつしか日常生活の些細な行動さえ重労働になる。しかし、そんな風に苦しんだ前と後では、たとえばDNA配列が微妙に変化するような感触で何かが変わる。つまり、爪と爪の間にねじこまれた針の痛みに苦しみ出すと、胃の上の辺りに冷たいしこりのような焦燥感が生まれて、果てのない自問自答がはじまるのだが、そうなるともはや息を吸う事さえ苦しい。思えばそのしこりは、古い自分が煮詰まった固まりのようなものなのだが、その固まりのようなものは突然、吐血するように口から吐き出され、それからは驚くほど気分が楽になる。そして、楽になった自分は、前の自分とはちょっとだけ違う。つまり、爪と爪の間にねじこまれた針が刺さった処からピリピリッ、と古い皮が破れて、少しだけ自分というものの質量が大きくなったような感覚だ。これを再生と捉えていいものかどうか。しかし、これは少なくとも過去の自分を部分的にせよ否定する事だから、それなりに辛い過程を経たのちに得られる感覚ではあるのだが。と、書いてはみたものの、ぼくはとてもいいかげんな人間だから、この註釈はまったく何の役にも立たないし、そもそもぼくが書いたものに対する註釈ですらないのです。

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2010.04.21 19:00
ashzashwash
確かにmixiのほうでコメントをいただきました。実はこの詩はこのブログに載せるかどうか迷っていたのですが。
2010.04.21 22:23
oomoji
そんでもって「UHURU!」



Gから解放されたら釣りあげられた深海魚みたくなっちゃうかもしれませんが。。
2010.04.23 11:22
ashzashwash
そういえばGから解放されることで着ている服という服の内側がアドバルーンみたいにパンパンに膨れあがるやいなやフワッと宙に浮かんでアッというまに成層圏の彼方まで流されていくのがぼくの夢です。
2010.04.24 00:16

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ashzashwash

Author:ashzashwash
桑原義江。男性。Ash。あるいはy<kと名乗った事もある。あるジャズ・レーベルのマネジメント・オフィスに勤務。その傍ら知人の紹介で、ファッションビルの広告媒体や某音楽系出版社の女性雑誌にアート関係の記事を書かせて頂き、その稿料で貧困生活を糊塗する日々が続く。或る日の朝、出勤のため恵比寿の坂道を下っている時に何もかもが嫌になり、地下鉄丸の内線日比谷駅のホームのベンチに蒼白な顔色で座っている姿を学生時代からの友人が見かけたのを最後に、東京23区内から失踪。赤坂のオフィスのデスクの上に残された遺留品は、デルヴォーの画集、カランダッシュの青いボールペン、それからビル・ラズウェルのライブのデモテープ、以上の三点であった。その後、アムステルダムの娼婦街でよく似た横顔の女衒を見かけたという報道もあったが、本人が非公式に否定。現在に至る。

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