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オリバー・オリバー

.15 2010 詩篇 comment(2) trackback(0)

明日なんて来なければいいのに。そう思ったとき、私は眠りながら意識の底で、朝が来ないように、つまり永遠の遅延が地球上の何処かの一点で足踏みしてくれるようにと、私と朝の間にある時間の全てを細かく切り刻みはじめる。
しかし、いくら時間を切り刻んでも時間はゆっくりと、一歩一歩、着実に、朝の方へと歩を進めてくるのだった。
やがてそのことに気がついた私は恐怖し、絶望し、もう眠っていることなどできなくなり、あわてて身を起こし、檻の中の虎のように部屋の隅から隅へと無限に歩きつづけようと試みる。
ああ。だが、その行為は無限ではあり得ない。そして、無限でなければ到底、永遠の遅延という目的を果たすことはできないのだ。そのことに私はようやく気づく。
私は部屋を出て、こんどは廊下の奥の薄暗い階段を昇っては降りる。時間を細かく切り刻むために、ひたすら昇っては降りる。しかし、朝は無慈悲にも私の切り刻んだ時間に追いついてしまうだろう。それでも私は階段を昇っては降りる。やがて窓の外が白みはじめてきた。ついに朝がもうすぐやってくる。
ああ。そのとき。ふいに私は知った。朝が追いついた瞬間、私はもう此処にはいないだろう。何処にもいないだろう。そもそも存在すらしていなかっただろうと。





07.jpg





註釈:この詩の題名について。実は「オリバー、オリバー。きみが嘆願書を書いてくれないから、ぼくは明日の朝いちばんに縛り首になるんだぜ」という題名だったのですが、入り切れないので略しました。或る夜のこと、映画「オリバー・ツイスト」を観ていて、終盤、例の乞食の王様が逮捕されたのち、拘置所にオリバーがその乞食の王様を訪ねてきた際に、彼がオリバーに減刑の嘆願書を頼むシーンを観ながら、ぼーっと思いついた散文なので、それを暗示するためにつけた題名です。まあ本当のところは、「明日の朝、何の準備もしてないのに簡易裁判所に出頭しなければならない」とか、あるいは「明日の朝、何も用意してないのに難しい試験を受けなければならない」とか、あるいは「明日の朝、どうも嫌な予感がするまま病院に入院しなければならない」とか、どうしようもなく嫌な朝を迎えるはずの深夜に於いて、うっかり寝てしまうと朝があっという間に来てしまうので、できるだけ眠らないようにしているような、そんなぼくの脆弱な精神を、乞食の王様の最後の光景に重ね合わせたただけの代物なのですが。

comment

hemakovich
なんとなく深夜番組を見ている時のような時間感覚がしますね。
遅延しているような停止しているような、だけど確実に進行している。
時間が物理的に進行しているというより、意識の中で進行しているような。つまり意識のみが進行しているような。
意識が時間と隔絶されているような世界を思い浮かびました。

しかし序章から確実に一貫して送り出してくる流れを感じますね。ブログの投稿が。
2010.03.15 21:59
ashzashwash
たしかに、いわれてみれば、アパートにひとりで暮らしていたころ眺めていた深夜番組の、有りあまる時間を持てあまして停滞しているような、あるいはそれでいて妙に時間が駆け足に過ぎていくようで、人知れず涙をこらえて無駄に焦ってしまうような雰囲気を思いだしました。あの当時、いったい何に停滞し、何に焦っていたのか。そして、なぜか同じ映画が何度も何度も放映されていて、退屈と知りつつ、その映画を何度も何度も観ていたような記憶まで蘇ってきました。あるいは同じ映画を何度も何度も反復して観るという行為もまた、意識が時間を切り刻むための儀式だったのかもしれません。
2010.03.16 00:35

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ashzashwash

Author:ashzashwash
桑原義江。男性。Ash。あるいはy<kと名乗った事もある。あるジャズ・レーベルのマネジメント・オフィスに勤務。その傍ら知人の紹介で、ファッションビルの広告媒体や某音楽系出版社の女性雑誌にアート関係の記事を書かせて頂き、その稿料で貧困生活を糊塗する日々が続く。或る日の朝、出勤のため恵比寿の坂道を下っている時に何もかもが嫌になり、地下鉄丸の内線日比谷駅のホームのベンチに蒼白な顔色で座っている姿を学生時代からの友人が見かけたのを最後に、東京23区内から失踪。赤坂のオフィスのデスクの上に残された遺留品は、デルヴォーの画集、カランダッシュの青いボールペン、それからビル・ラズウェルのライブのデモテープ、以上の三点であった。その後、アムステルダムの娼婦街でよく似た横顔の女衒を見かけたという報道もあったが、本人が非公式に否定。現在に至る。

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