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ヒム,実験的なコント,あるいはテクストによるポップアート

.17 2010 短篇 comment(5) trackback(0)


先日、Twitteのタイムライン上で、「ヒム,実験的なコント,あるいはテクストによるポップアート」と題して、数日間にわたりツイッターノベルを連続ツイートしました。その時のツイートを纏めたサイトをここでリンクすると共に、蛇足じみた注釈をちょっとだけ書いておきます。


まとめサイト→http://togetter.com/li/27515


註釈:絢爛たるローマン・カトリックの聖誕祭を鑑賞していると、宗教の基本はやはりスペクタクルなのだ、という単純な事実に思いあたり、あらためてイエス・キリストの受難物語の奇跡の一つ一つの重要性に気付くとともに、彼の死後、それらの奇跡にちなんだイコンを一面にちりばめて、宗教のスペクタクル化に磨きをかけたカトリック教会の見事なプロデュースぶりに驚かされるのだが、それはそれとして、先日、ヒムという罰当たりなコントを書いた時に参考にした作品を幾つかここで紹介しておきたい。

まずはマーティン・スコセッシの『最後の誘惑』。

この映画のなかでウイレム・デフォーが演じるイエス・キリストが、肉欲にも悩まさせる普通の若者として描かれているとかで、衝撃の問題作とか騒がれていたが、さほどのことはなく、結構、聖書研究書の<史実>に基づいて描かれているらしいよ。

それよりも問題なのは、スコセッシ独特の屈折した美意識が織りなす徹底した写実的演出と、宗教画から引用した古典的演出の混淆からもたされた不思議な映画的快感の存在である。特に圧巻なのは磔刑の場面で、観る者にキリストの痛みがひりひりと伝わってくるのだが、それは処刑法を歴史的に検証して細部にいたるまで再現したという完全主義にのみ起因するのではなく、古典的な様式美をそなえた宗教画からの引用を導入することで、観る者の時間の感覚を緩慢に狂わせていくという、きわめて実験的な手法からくる感動によるものだ。

ぼくはストリー・テリングで味わう感動も好きだが、こうした実験的な手法によってもたらされる不思議な感動にも目がないのである。

かつて、白金にあった都ホテルの地下のフレンチ・レストランに、ボリュームたっぷりのテンダーロイン・ステーキの上に、そのステーキと同じ大きさのフォアグラのソテーを載せた料理があって、その料理の掟破りの旨さに下衆な感動を覚えたことがあるのだが、スコセッシがこの映画に仕掛けた罠には、その時以来の手厳しい背負投げを食らわされたよ。

次に、ピエル・パオロ・パゾリーニの『奇跡の丘』。

いわゆる<聖書映画>といえば、セシル・B・デミルの『十戒』に代表されるように、オールスターキャストを謳うハリウッド大作でありつつも、アメリカ最大の勢力であるキリスト教右派への目配りを忘れない政治的産物であったり、あるいは原典に忠実とは云いながら、必ずしも<聖書>だけに拠るものではなく、ヨセフスの手になる『ユダヤ古代誌』の中で描かれた伝説にすぎない<モーゼのエチオピア遠征>のシーンが最大の呼び物であるスペクタクル映画であったりしたものであるが、スキャンダルな無神論者として知られるパゾリーニは、こうした映画的なギミックを意図的に廃すことで、当時としてはまったく新しいキリスト像を創造することに成功したのだ。

たとえば彼は、まったく無名の素人俳優を使うことで既成のキリスト的イメージを破壊し、返す刀で、クリスチャンには耳慣れたはずのエピソードを新たな視点で眺めさせる。

そのうえで彼は、保守的なキリスト教団体の推薦を受けるほどに誠実な態度を装い、<マタイ>の福音書を忠実に映画化したのであるが、このあたり誠に食わせ者であって、キリストを<保守的に>解釈する<マタイ>を忠実に映像化すればするほど、キリストが希代の<革命家>であったことを強調する結果になるという、皮肉な離れ業を成し遂げているのである。嘘じゃないってば。

次にジャン・リュック・ゴダールの『ゴダールのマリア』。

べつに物議をかもした映画ばかり選んでいるのではないのだが、面白い宗教映画を探すと結局こうなる。

この映画もまた新解釈による<処女懐胎>で世間を騒がせた。ここでもスコセッシ同様、古今東西の宗教画からのとんでもない引用が次々に出てくるが、この手法はむろんゴダールの方が早い。あたりまえだ。ゴダールより早い映画作家などいない。ただし映画を破壊してまわる逃げ足の早さだがね。

ところで、さっき、『最後の誘惑』を観てキリストの痛みに心打たれたと書いたが、そうとも、ぼくはその痛みを乗り越えてヒムというコントを書いたのだ。なんてね。

さて、ゴダールもまた、胸の傷みを隠して他人の心を傷つけてしまう不幸な人間であった。盟友フランソワ・トリュフォーとの蜜月と反目。いつしか憎みあうようになったトリュフォーの急死。ゴダールが殺したようなものだと云われた。しかし、誰よりも悲しんだはずのゴダール。きっと、早世するのはトリュフォーではなく自分の権利だと思っていたことだろう。

最後に光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』。

光瀬龍こそ、石川淳、山田風太郎と並んで現代日本で最高のスタイリストではないかと思ったりもするぼくなのだが、この大河哲学思弁SF小説に登場するキリスト像のおぞましさは、その格調ある文章と反比例するかのごとく激烈で、およそ純真なクリスチャンなら怒髪天を衝くこと疑いなしであろう。

ぼくが、少々のことなら書いても構わないなどと、大それたことを考えたのも無理はない。なにしろイエス・キリストが実はXXXXで、さらにはXXXXだというのだから、とても恐ろしくてここには書けない。

小説版と共に、萩尾望都による漫画版の『百億の昼と千億の夜』を推薦しておく。

この禁断の書を映像化しようという勇気と、その完璧な出来ばえには溜息をつくばかりだ。ちなみにこの本、後藤久美子か中谷美紀主演で映画化するってのはどうかね。監督はもちろん『ダーク・エンジェル』のジェイムズ・キャメロンしかおるまい。

紙芝居じみたジョークに逃げないという保証つきなら市川昆に撮って欲しかったのだが、手塚治虫の『火の鳥』の映画化の出来が酷かったからなあ。パゾリーニみたいな感じで淡々と映像化して欲しかったのに。なんだよ、あの下手なアニメは。結局マンガを馬鹿にしてたんだね、巨匠は。キャメロンの方がよっぽど日本のマンガへの敬意を感じるよ。

comment

hirohito57
ツイットの合間に読むのと違い、一息に読むのも、読み応えありでした。絶賛。萩尾望都よいですね。「11人いる!」が好きでした。ジェシカ・アルバもキャスティングしていただければ、屋上で一人たたずむ姿は抱きしめたくなりました。

2010.06.17 21:20
ashzashwash
コメントありがとうございました。励みになります。しかし、いいですよね、ジェシカ・アルバ。最近のハリウッド女優で作品を無視したうえで本人からの魅力を感じるのは彼女くらいです。「シン・シティ」でのストリッパー役も、まったく脱がないストリッパーという酷い役柄だったけど彼女は最高でした。
ところで、このコント、一部に校正ミスがあるのですが、その場所がどこだった忘れたうえに、もう読み直したくないので直していません。しばらく見逃してください。お願いします。
2010.06.17 22:39
ashzashwash
あと、阿修羅役について、後藤久美子と中谷美紀ではもはや少女役は無理と思いつつ、他の女優が全く浮かばなかったことも付け加えておきます。そうか、阿修羅はむしろジェシカ・アルバでいいのかもしれない。
2010.06.17 22:42
ダディ
日程は未定ですが、地元で個展を開催します。
もしお時間がありましたら、是非お越しください。
2010.06.20 18:54
ashzashwash
ダディさん、お元気でなによりです。ぜひ、ここでも告知なさってください。
2010.06.23 15:28

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ashzashwash

Author:ashzashwash
桑原義江。男性。Ash。あるいはy<kと名乗った事もある。あるジャズ・レーベルのマネジメント・オフィスに勤務。その傍ら知人の紹介で、ファッションビルの広告媒体や某音楽系出版社の女性雑誌にアート関係の記事を書かせて頂き、その稿料で貧困生活を糊塗する日々が続く。或る日の朝、出勤のため恵比寿の坂道を下っている時に何もかもが嫌になり、地下鉄丸の内線日比谷駅のホームのベンチに蒼白な顔色で座っている姿を学生時代からの友人が見かけたのを最後に、東京23区内から失踪。赤坂のオフィスのデスクの上に残された遺留品は、デルヴォーの画集、カランダッシュの青いボールペン、それからビル・ラズウェルのライブのデモテープ、以上の三点であった。その後、アムステルダムの娼婦街でよく似た横顔の女衒を見かけたという報道もあったが、本人が非公式に否定。現在に至る。

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