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.23 2010 詩篇 comment(0) trackback(0)


パリの舗道で転んだところが、


バルセロナのバルで紫色の痣になって、


そこから夜毎オリーブの枯れ木めいた魔女の腕が、


無音のままに、ねーねーねーと伸びあがり、


窓の硝子をねじくれた爪でコツコツコツと叩いては、


北の空を指差してうるさいものだから、


ぼくは今夜もホテルの小部屋をぬけだして、


廊下の突きあたりのうすぐらいアーカイブに置かれた、


アフリカ産の箪笥の引出しに頭を突っ込んでは、


そこから見える南半球の夜空に瞬きをしながら、


ついでにムリムリっと軋んだ音をたてながら、


上半身の全てを箪笥のなかに投げ出すべく


献身的な努力を重ねるのだが、


いつも腰まで入ったところで、


夜勤のボーイに発見されては引っ張りだされるのが常で、


いつものように照れ隠しと、


それとむろんのこと他言無用の口封じのために、


自称俳優志望のボーイを連れて地下1階の酒場まで降りて、


ふたりして林檎のブランデーを1本飲み干すのが最近の夜の習慣でね。


ああ、それにしても傷が疼いてならないのだが、


ああ、だからぼくは、ホテルの外の夜の闇に降りていって、


あのミラ邸の裏にある調子外れのビルの喧噪に紛れ込み、


会員制のエレベーターの鍵を使って屋上まであがりこみ、


夏場だけの即席のプールの表層に身をまかせて、


ただゆらりゆらりと揺れていたいと切に願うのだ。


そうすれば、


傷の傷みのことなど忘れてしまうさ。


魔女の腕のことなど忘れてしまうさ。


おんなの躯の仕組みのことも忘れてしまうさ。


あとは朝まで路上を徘徊するための薬だけ、


何とかくすねちまえばそれでいいんだ。


そんなのは簡単だ。


クロークのなかのコートというコートの、


ポケットに手をつっこめば手に入るのだから。


そしてぼくは発情期を失った若き白豹になって、


街へと降りていくんだ。


そして、街から谷へと、降りていくんだ。


細い谷を横切ろうとしたら、


象皮病の感染源の疑いで市長から火を付けられた小屋が燻っていた。


なかからはレンブラントの絵が燃える匂いがした。


この夜明けの風景は誰にも渡さないと決めた。


しかし誰が欲しがるというのだ、こんなもの。


やっぱり欲しけりゃくれてやることにしたよ。




IMG_KIZU3409.jpg


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ashzashwash

Author:ashzashwash
桑原義江。男性。Ash。あるいはy<kと名乗った事もある。あるジャズ・レーベルのマネジメント・オフィスに勤務。その傍ら知人の紹介で、ファッションビルの広告媒体や某音楽系出版社の女性雑誌にアート関係の記事を書かせて頂き、その稿料で貧困生活を糊塗する日々が続く。或る日の朝、出勤のため恵比寿の坂道を下っている時に何もかもが嫌になり、地下鉄丸の内線日比谷駅のホームのベンチに蒼白な顔色で座っている姿を学生時代からの友人が見かけたのを最後に、東京23区内から失踪。赤坂のオフィスのデスクの上に残された遺留品は、デルヴォーの画集、カランダッシュの青いボールペン、それからビル・ラズウェルのライブのデモテープ、以上の三点であった。その後、アムステルダムの娼婦街でよく似た横顔の女衒を見かけたという報道もあったが、本人が非公式に否定。現在に至る。

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