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口に含んだ物を飲み干しながら

.08 2018 未分類 comment(0) trackback(0)


口に含んだ物を飲み干しながら窓辺のカウチに倒れこみ

眼を固く閉じているのになぜか視界に広がる眩しい光に

いい知れぬ戸惑いと恐怖を覚えて寝がえりを打った瞬間

ぼくはユーフラテス河の川辺にひとりで横たわっていて

処女の太腿のような葦の群生に埋もれながら眠りにつく 




朝の光芒を裂くように褐色の少女の腕が差し伸べられて

その幼げな指を一本だけ歯と舌で愛でながら眼をひらく

するとぼくは砂漠に湧く泉の陰に仕立てられた天蓋の下

ふと耳元で大鴉が囁く気配がしたのは名付け得ぬ何かを

だれかが不用意に裸形の言葉で口にしたからに違いない




それからぼくの記憶にあるのはペテルブルクで酔い潰れ

泥酔の果てに排水溝に落ち凍死体で発見される屍体だが

解剖すると胃の中にカスピ海の海水が発見されたことで

明らかに殺人の疑いが強まり慌てまくる関係者を横目に

黒猫が屍体の傍らで微笑みながら大きな伸びをする姿と




珊瑚礁の明るい水底に根をおろして貴種流離の夢みつつ

怠惰に暮らす海藻のお嬢様方が七つの海をさすらうのに

疲れて世界滅亡の呪文を漏らすやくざな浪どもの懇願に

応えて心やすくその身を委ねるような午後のまどろみに

目眩だけを覚えながら無為の流転を回想するだけの人生




それは滅びの笛のような吐息を漏らすだけの日々だから

歯で噛切った爪で手首の裏を掻きむしるのが習慣になり

ぱっくりと開かれたままの傷口とその傷口のかさぶたを

爪で剥がす行為との間で壊死しかけている皮膚から浸む

悪い血がまたぞろ膿胞を孕ませてぼくを苦しめるのだが



光を掴めという渇望とその裏に粘りつく諦念に導かれて

チュニスの亜麻色の街角で悪魔と密約を交わした午後に

ぼくは都市と悪魔はよく似ている事に気がついてしまう

どちらも欲望と恐怖の二つの目しかない骰子を転がして

為す術もなく破滅だけが待ち受けるゲームを強いるのだ




表参道の遊歩道では堕天使たちが非の喇叭を吹きながら

地下からぞくぞくと群れをなして沸いてくるのが見える

その堕天使たちは顔の左反面が醜く焼きただれているが

ぼくは溶け損なった砂糖が喉にこびりついて声を失って

陽だまりに脚が嵌ったまま身動きが取れないままなのだ




それからぼくは発情期の白いコヨーテになりコロラドの

ハイウェイでヒッチハイカーをピックアップするだろう

そのビッチをダイナーの駐車場でたっぷりと嗜んだあと

砂糖菓子のようにざらついた少女の肌を見に纏いながら

太陽と鉄と月とコンクリートの懐かしい場所で夢を食む




どんな約束も奴隷への道だからしてはいけないはずだし

こうなればもはやニューオリンズの沼地に小屋を建てて

権力への欲望で生くるしく乾いた蛇の舌を切断してから

死者の言葉を口にする忌わしい赤ん坊の頸を締め殺して

所有権を主張する母親と共に沼底に沈めるしか道はない




それからぼくは遅延された死の余韻に舌鼓をうちながら

約束は奴隷への道だからしてはならぬという天啓に抗い

なにひとつ楽しみなどないことが最高の贅沢とつぶやき

明日の訪れを待つこともなく忘却という毒を呷りながら

今日という日を街角で待ちぶせてゆっくりと殺すだろう 

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プロフィール

ashzashwash

Author:ashzashwash
桑原義江。男性。Ash。あるいはy<kと名乗った事もある。あるジャズ・レーベルのマネジメント・オフィスに勤務。その傍ら知人の紹介で、ファッションビルの広告媒体や某音楽系出版社の女性雑誌にアート関係の記事を書かせて頂き、その稿料で貧困生活を糊塗する日々が続く。或る日の朝、出勤のため恵比寿の坂道を下っている時に何もかもが嫌になり、地下鉄丸の内線日比谷駅のホームのベンチに蒼白な顔色で座っている姿を学生時代からの友人が見かけたのを最後に、東京23区内から失踪。赤坂のオフィスのデスクの上に残された遺留品は、デルヴォーの画集、カランダッシュの青いボールペン、それからビル・ラズウェルのライブのデモテープ、以上の三点であった。その後、アムステルダムの娼婦街でよく似た横顔の女衒を見かけたという報道もあったが、本人が非公式に否定。現在に至る。

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