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GAP

.19 2010 詩篇 comment(2) trackback(0)

















































































































































































































僕は屋根裏に棲んでいた。思えば、物心ついたときには、すでに僕は黒装束に身をつつんだ忍者であったし、ずっとこの屋根裏を徘徊し、かがみこみ、下に棲む侍たちを見張っていたのだった。また、気がつけば、忍者は僕だけではなく、まわりにいっぱいいて、それぞれ見張る侍が決まっているらしい。しかし、僕たち忍者は、忍者どうしで声をかわすこともなく、ただもくもくと、下の侍達を見張っている。僕にとっては床、下に棲む侍達にとっては天井となる板は、僕たち忍者が、下の侍達を見張るためにキリで空けた穴でいっぱいになっていて、下から漏れてくる光線がまるでプラネタリウムみたいでとても綺麗だったことを今でも覚えている。ある日のこと、僕が見張っている侍がバスタブに入っている時だった。僕はうっかり梁を踏み外して、天井の板に足を下ろしてしまった。メリ、メリ、という、不随筋めいた音を立てて、天井が裂け、僕はけたたましい悲鳴を上げながら下に落ちた。その瞬間。激しい水音が聴こえた後、おそるおそる目をあけると、僕は大西洋の真ん中を漂っていた。小さな筏の上だった。太陽から降り注ぐ無慈悲な熱線に躯が悲鳴をあげていた。それからのことは筆舌には尽し難い。希望峰を横切る苦しい航路のさなか、激しい嵐をくぐりぬけた後、疲れ果てた僕の遠い視線の先には、ひたすら白い大陸が見えてきた。それは、気が遠くなるほどに真っ白なアフリカの大地が、沈黙を守ったまま、海の上に横たわっている姿であった。





01.jpg





註釈:これは例えば、祖母が嫁入り道具としてこの屋敷に持ち込んだという古い箪笥の上に、ひとりの少女が正座して座っている。その少女の額の、ちょうどおかっぱにした前髪が眉毛に触れるあたりから、ぐるっと左右に亀裂が入っている。と思った次の瞬間、頭がぱかっとふたつに割れて灰色の脳髄が剥きだしになってしまうのですが、その少女は痛がりもせず、その脳髄をウインナーソーセージ状に丁寧に揉みほぐしたのち、まるで黒髪を梳るような姿勢で、箪笥の上から床にするすると垂らしてみせる。すると、床に届いたウインナーソーセージ状の脳髄が、十重二十重に積み重なっている光景が見えてきますよね。そんな感じの詩です。

comment

hemakovich
最近この詩をサイトの方で読んでびっくりしたところだったので時期を合わせたかのようにブログにアップされていてもっとびっくり。
縦行に落ちてくる途切れそうな言葉が横列になって途端に饒舌になって見える。見えるというより、実際に言葉の種類が違う。
縦から落ちていくまでの間がとても凍える。寒々としたところから意味が凝縮されている。横列に落ち着いてからの饒舌が恐ろしい。一気に何かが暴露されるかのような感覚がある。でも実際は暴露と言うより放り出されたような感じ。ドアの向こうに永遠に終わらない無数のドアがあるように。
2010.03.19 19:43
forgetful_cat
日本語の詩作に置いて、縦書きは本来自然な状態なのだけれど
それがウェブ上で展開される時、若干の違和感を覚える。
違和感と言うか、それは不安感にも似て。
言葉が滴って行くその先に井戸の様な横書きの穴を用意している所が面白い。

あなたは忍者でしたか
わたしは箪笥の上に座っている少女だったのですよ
今でもおかっぱで
自分の脳髄をいじくり回し
笑いながら箸でそれを突いているのです
2010.03.19 20:59

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ashzashwash

Author:ashzashwash
桑原義江。男性。Ash。あるいはy<kと名乗った事もある。あるジャズ・レーベルのマネジメント・オフィスに勤務。その傍ら知人の紹介で、ファッションビルの広告媒体や某音楽系出版社の女性雑誌にアート関係の記事を書かせて頂き、その稿料で貧困生活を糊塗する日々が続く。或る日の朝、出勤のため恵比寿の坂道を下っている時に何もかもが嫌になり、地下鉄丸の内線日比谷駅のホームのベンチに蒼白な顔色で座っている姿を学生時代からの友人が見かけたのを最後に、東京23区内から失踪。赤坂のオフィスのデスクの上に残された遺留品は、デルヴォーの画集、カランダッシュの青いボールペン、それからビル・ラズウェルのライブのデモテープ、以上の三点であった。その後、アムステルダムの娼婦街でよく似た横顔の女衒を見かけたという報道もあったが、本人が非公式に否定。現在に至る。

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